スパイス  組み込み制御装置の受注製作

PIC32の導入
平成26年9月18日

 32ビットマイコンの必要性
 田舎で組み込み装置を作っていると、一緒に仕事をする機械屋さんの年齢は都市部の企業に比べるとどうしても高めになります。それなりに経験を積んだ方ばかりなのですが、反面変化の激しい他の業界に対する認識はどうしても古い傾向があります。特に制御システムのように短期間で急速に成長してきた分野に対する認識は、お世辞にも褒められない人の方が多数派です。
 下記はそんな機械屋さんに聞かれて返事に困る質問の代表的なものです。

 機械制御のためだけに本当に32ビットマイコンが必要なのか?

 この質問の背景には、色んな前提があります。 書き出すとたくさん出てきそうですが、多くなりすぎると焦点ボケしますのでこの位で。
これについて少し書いてみます。
 昔に比べて時間に対する要求が厳しいユーザーが増えてきました。現在の装置の多くは故障したときに如何に短時間で復旧できるかを厳しく問われています。これは下記のような装置ではあまり重要ではありません(装置全体を交換すればいい)。   一般的な工業装置の多くは重量物であり、一旦設置するとおいそれとは交換できない装置が大半です。
また、一部には制御部をモジュール化して簡単に交換できる装置がありますが、一般的な機械装置では制御部から多数のケーブルが装置の各所に伸びています。このような装置での故障の多くは制御部よりもその先のケーブルやケーブルの先に接続されたセンサなどのユニットです。完全に故障していればまだ良いのですが、不完全な故障状態では故障箇所を特定できず再現性の悪い故障となり、何度も修理する羽目にあいます。

このような装置では嫌でも現地修理で対応するしかありません。現地に移動が伴うため持参できる設備には制約が課せられます。
昔の装置には、このような状況下における保守機能が無いため、現地で作業するサービス員のスキルが修理結果に大きく効いてきます
限られた設備の中で修理をしないといけないサービス員の教育には非常に多くの費用と時間が必要です。更に一人が複数の製品を担当するのが一般的ですので、担当者による得手不得手が更にはっきりとしてきます。
これに対する制御技術者の回答が製品に保守機能を組み込むことです。基本的な保守操作の機能を共通の操作方法で統一することで製品ごとの差異を最小化し、サービス員への教育負担を軽減します。
 更に再現性の悪いトラブル現象を捕まえるために、装置の稼動状態を逐一記録し、必要なときに取り出す機能や保守用の機械動作をプログラムするなど多くの機能が考案されています。これらの機能を機械制御と平行して動作できるだけのCPU性能が必要になります。

 故障しないに越したことはないのですが、現実には不可能です。故障を減らすために定期点検や定期OHの導入なども案内されていますが、中々受け入れてもらえないのが実情です。ユーザーが望むのは運悪く故障しても故障停止時間を最短にして生産に復旧できる装置です。保守性や故障回復時間といった指標は現在の装置では非常に重要視されます。特にリピート注文を検討するときには装置の実力が分かっています。ここでのアドバンテージは非常に強いアピールポイントになります。
 そのためには製品装置に多くの保守機能を追加実装する必要があります。古い世代の製品では時代の要求に対応できません。


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