スパイス  組み込み制御装置の受注製作

よくある質問と回答

過去に制御装置に関して、特に専門以外の機械や文系の方などから受けた質問を順次追加しています。

金額・納期に関係するFAQ
 産業機器では個々の製品を非常に少ない生産台数で生産を行うため一般の市販製品より割高な単価になります。また、多くの製品は受注生産であることが多く、数ヶ月以上の納期が必要です。

Q  個人だと企業より安く出来るんでしょ
A  そういった内容のHPも見かけますが、私の感覚では、企業と個人を比較するのは無理があると感じます。
単純な金額だけなら大企業と比較すればはるかに安価な金額を提示できますが、大企業はその金額に見合うだけの設備や品質を確保できる体制が前提です。個人ではとても同じ土俵には上がれません。
 従業員数が数人〜数十人規模の企業との比較では、その企業がどのような体制をとっているかによって変わってきます。一人の担当者がすべてを担当するなら個人と変わらないですが、複数の人間が設計・クロスチェック・試作・動作検証といった各工程を分担するなら、その分より安定した製品が期待できます。
反面、すべての作業者がベテランという訳にはいかないでしょうから、作業者間のコミニュケーションが良くないと思わぬ不具合を見落とす危険性はあります。
 対して個人ではある程度の経験者がやっていますが、すべての作業に関して十分な経験があるという訳でもないので、その人による得手不得手があります。また、すべてを一人でこなすので他人によるクロスチェックが入らず、思い込みによる単純なミスですら見逃してしまうことも考えられます。
 「安かろう悪かろう」では無いのですが、やはり大企業のような体制では多くのリソースを使うので安価には出来ません。個人はその逆になります。金額だけを見れば安いかもしれないですが、提供される製品・サービスを比較すると金額と比例関係にあります。

Q  従来の既存基板と同じ単価で納入できますよね
A  ある程度の生産数量がまとまれば可能性はあるのですが、少量生産ではどうしても割高になります。
市販基板は、大量生産を前提にしていますので、原価に含まれる部品の単価も非常に安価に入手しています。我々のようなごく少量での生産では部品原価・製造設備の減価償却・時間当たりの生産可能数量などすべての面で割高になってしまいます。

Q  既存基板の互換品を作るのにどの位の期間が必要ですか
A  基板の規模や実装されている機能の複雑さによって大きく変わります。また、どの程度資料が揃っているかも重要です。少なくとも回路図と現物は必須です。取扱説明書や基板の寸法図などの関連資料もあった方が望ましい。一つの目安として比較的小規模な基板でかつ良い条件が揃った場合でも3ヶ月程度は必要です。

既存基板の機能互換品の製作に関係するFAQ
既存の基板を参考にすればいいので簡単に出来ると思われがちですが、当時と現在では多くの面で前提になる状況が異なります。金額・納期に関係するFAQもご参照ください。

Q  今、手元にある物をコピーするだけだから簡単に出来るよね
A  まず、基板のデッドコピーは請け負っておりません。メーカーが倒産・廃業・生産中止などの理由で入手できない物に関してのみ機能的に互換となる基板を生産しています。
 次にメーカー製品と全く同じ部品をすべて入手できることはまずありません。生産中止やメーカーの統廃合によってメーカー製品とは異なる部品を使用することになります。使用部品の変更は細部での回路変更が伴います。これによってメーカー製品とは部品配置・パターン配置が変わります。これらの作業はそれなりの知識・経験が前提になります。
 また、製品として出荷するためには出荷テストを行う必要があります。特にCPUが古い世代のものであれば、テストプログラムが動作する環境をゼロから作り直す必要があります。これらは直接製品に添付されることが無いので見過されがちですが、非常に大きな負担になります。旧世代の組み込みCPU開発もご参照ください。

Q  なぜ未使用な機能を削除する必要があるのですか
A  特に製品の機能テストが複雑になるのを避けるためです。市販基板では出荷テストのために比較的大掛かりなテストベンチを組んでいます。生産数が多ければこれらの費用も吸収できるのですが、少量生産では非常に大きな負担になります。出来るだけテストを簡略化することが重要です。
 もうひとつの側面として常に可能とは限らないですが、基板の枚数を減らしたいという要望が出てくる事があります。従来の基板枚数ではスロットが一杯になったため機能追加が出来ず、複数枚で構成される機能を一枚にまとめることで基板枚数を減らして空きスロットを確保したいというご希望です。

Q  PLDを使っている場合に出来ないケースとは
A  PLDは内部回路をプログラムで変更可能なデバイスです。このソースプログラムをエンドユーザーであるお客様が持っている事はほとんどありません。従って内部回路は周辺回路や機能から「類推する」必要があります。非常に簡単な物からLSI並の規模のものまでありますので、内部回路の決定には多くのリスクが伴います。リスクがある一定以上を超えると判断した場合には、お客様に迷惑がかからないようにお断りしています。
例外的に「ダメ基でも良い」とのご要望であれば前向きに検討します。

従来システムの再設計に関係するFAQ

Q  従来システムで不満を感じていないが部品の入手不可により生産継続できなくなった。今の製品を元に必要最小限の変更で再設計できないか
A  出来るか出来ないかとの質問であれば出来るのですが、本当に当時の製品仕様で不満が無いかどうかは慎重な判断と現状確認が必要です。設計時期にもよるのですが、20年以上前の設計では多くが現在の市場要求には対応できない物がほとんどです。当時の装置の多くは製品としての動作は出来るのですが、修理をはじめとした保守機能を実装していないものが多いのです。このため現地修理が必要な装置などでは故障箇所の特定に多くの時間がかかる物があります。このようなケースでは大抵、特定の人が専任で保守していることが多く問題が広く認識されていません。この専任者が定年退職などで辞めた途端に他の人では全く歯が立たず、この時点で初めて問題が表面化することがあります。
 再設計を行うなら今後10年以上の保守を前提に考える必要があります。現在の人が保守できる装置の仕様と機能を考慮することを強く薦めています。これを前提にするなら組み込み装置では事実上C言語一択になります。C言語すら使えないマイコンは速やかに他のマイコンに交換した方が多くの面で恩恵を受けられます。