PIC32MM CPUシステム

令和元年 12月

   アナログ入出力

 AD変換基板

AD変換基板は変換時にノイズの影響を受けるため、基本的に同じ電圧を変換しても変換後の数値は少しバラつくのが普通です。
当然、分解能が上がるほどバラつきの幅は大きくなるのですが、それを示しておかないと使う側はどのように使うべきか判断し難くなります。
このため、AD変換器の各レンジにおけるバラつきと分解能の関係を示します。各実験は同じ入力を1000回変換した結果です。

 実験には既知の出力電圧として今回一緒に製作したDA変換器の出力を使用します。DA変換器の出力特性については、こちらを参照してください。
DA変換器の出力自体にも多少のノイズを含むので、AD変換器の実力はこの値よりは良いことになります。
出力の設定値は0V基準のレンジでは出力レンジの50%値とし、±両電圧のレンジでは出力レンジの+側50%値とします。

 9.AD変換基板の変換再現性検証

 表1.1〜1.4にAD変換基板の変換結果を示します。

   表1-1.0-5Vレンジにおける50%(2.4995V)入力の結果           表1-2.0-10Vレンジにおける50%(4.9995V)入力の結果    

 表1-1.は0-5Vレンジにおける変換結果です。このレンジでのDA変換器の50%(0x8000)時の出力電圧は2.4995Vなので、計算上のAD変換器の期待値は32761になります。
この表の中心値は32765なので、誤差は+0.01%以下と非常に良好です。
測定値の分布を見ると、分解能16ビットでは読み値32764〜32768の5値で全体の90%以上を占めています。
同様に分解能15ビットでは読み値32764〜32768の3値で全体の90%以上を占めています。
分解能14ビットでは読み値32762〜32766の2値で全体の95%以上を占めています。
分解能13ビットでは読み値32758〜32766の2値で全体の99%以上を占めています。

 要求される分解能によるのですが、このレンジにおける使用の目安としては13〜14ビットで使用するのが良いと考えられます。
同じ値を3回変換して測定値の中間値を採用するようにすれば、大きな変換誤差を避けることが出来ます。当然12ビット以下なら、なお良好な結果となります。
それ以上の分解能が必要なケースでは、以下のような方法が考えられます。
  ・ 5回の変換結果から最上位と最下位のデータを削除して残りの3データの平均を取る。
  ・ 5回の変換結果から中間値を採用する。

表1-2.は0-10Vレンジにおける変換結果です。このレンジでのDA変換器の50%(0x8000)時の出力電圧は4.9995Vなので、計算上のAD変換器の期待値は32764になります。
この表の中心値は32766なので、誤差は僅かに-2と非常に良好です。
 各分解能における分布の説明は省略しますが、0-5Vレンジに比べると1ビットあたりの電圧分解能が半分になった分、分布幅も狭くなっています。
 このレンジにおける使用の目安も先ほどと同様、13〜14ビットで使用するのが良いと考えられます。


   表1-3.±5Vレンジにおける50%(2.4999V)入力の結果           表1-4.±10Vレンジにおける50%5.0008V)入力の結果    

  表1-3.は±5Vレンジにおける変換結果です。このレンジでのDA変換器の+側50%(0xC000)時の出力電圧は2.4999Vなので、計算上のAD変換器の期待値は16383になります。
この表の中心値は16384なので、誤差は僅かに計測値で1と非常に良好です。
 このレンジは先の表1-3.と1ビットあたりの電圧分解能が同じになるので、結果も同じような傾向となっています。

  表1-4.は±10Vレンジにおける変換結果です。このレンジでのDA変換器の+側50%(0xC000)時の出力電圧は5.0008Vなので、計算上のAD変換器の期待値は16387になります。
この表の中心値は16387なので、計測値と一致します。1ビットあたりの電圧分解能は先のレンジより更に下がるため分布幅も更に狭くなり、分解能13ビットでは遂に1値に収まっています。

 これらの結果を見ると、1ビットあたりの電圧分解能によって分布幅が決まっているのが良く分かります。
最終的には、高い分解能を必要とするなら、その分多くのAD変換を行ってその中心値をとる必要があります。
分解能が低くても良いなら10〜12ビット程度の分解能で使用します。この場合AD変換は1回でもほとんど変化しない値が得られます。




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