PIC32MM CPUシステム

令和元年 10月

    アナログ入出力

 1.アナログ入出力を検討する

 PIC32MM CPUシステムにアナログ信号の入出力機能を追加します。具体的にはAD変換とDA変換です。
当初の目標仕様として以下を設定します。これは主にPLCのアナログ入出力ユニットを参考にしました。
  ・ アナログ信号として一般的に使用される±10V信号を取り扱いできる(仕様としての最大電圧)
  ・ 可能であれば以下の測定レンジを追加する。
    0〜5V, 0〜10V, 4-20mA電流
  ・ 分解能は実効的に10ビット程度を目標として12ビット分解能のAD/DAコンバータを使用する。
  ・ CH数にはあまりこだわらず、基板の面積に乗るCH数とする(CH数確保のために無理はしない)。
  ・ 部品の入手性には特に気を使い、可能な範囲で特殊な部品の使用を避ける。
  ・ CPU側の電源との絶縁を行うと共にCH間の絶縁も可能な限り実装する。

 これらの目標は汎用システムを前提にしたものです。一般的な環境では必要のない仕様も含まれているかと思います。
特にノイズ対策としての絶縁は必要性の賛否が大きく分かれると思いますが、汎用システムということで最大仕様を目指します。
これらの目標を設定する段階で幾つかの課題が見つかります。それを以下に列記していきます。

 1.1 部品の入手性と性能のバランス
 これらのアナログ的な性能を個別のOPアンプやCR部品を組み合わせて実装するのは大いに無理があります。
主要な性能はIC化された専用部品に依存するのが現実的です。
これら専用部品の採用は部品の入手性とは相反しますが、目標仕様を優先して専用部品を採用します。


 1.2 絶縁と性能のバランス
 CPU側の電源だけでなくCH間でも絶縁する場合は、全てのCH毎に絶縁された電源と絶縁素子が必要です。
(なお、複数CH仕様のAD/DAコンバータを使用する場合は、当然のようにICパッケージ単位での絶縁になります)
絶縁の方法としてはデジタル部分で絶縁する方法とアナログ部分で絶縁する方法があります。


 図(a)のデジタル部分で絶縁する方式では絶縁する信号線の数が重要になります。可能であればCHあたり数本以内にしたい。
多くても十数本以内です。それ以上では絶縁に必要な基板面積が大きくなり過ぎ、実用的ではなくなります。
この方式では絶縁された電源としてCH毎にデジタル用電源とアナログ用に±電源の3電源が必要です。
この方式のメリットはアナログ的な性能はほぼAD/DA変換部で決まるため、デバイスの性能を最大限に発揮できます。
DA変換はこの方式で進めます。

図(b)の方式では、アナログ的な性能は絶縁に使用する絶縁アンプとAD/DA変換の両者に依存します。
特に絶縁アンプは市場に流通している種類も少なく高価な上、性能面でも満足できるものではありません。
なので使いたくはないのですが、AD変換ではADコンバータの仕様によってはADコンバータに接続されるデジタル信号の数が多くなりデジタル部分での絶縁が難しくなります。その場合は、この方式を取らざるを得ないと考えています。
この方式では絶縁された電源としてCH毎にアナログ用に±電源の2電源が必要です。ADコンバータによってはデジタル用の電源も必要になります。


 1.3 絶縁電源
 これらの基板には多数の絶縁型電源が必要です。このため小型で出来れば安価な絶縁型電源を使いたいところです。
幸いなことに、この数年で各社が共通のピン配置・寸法の電源を発売しています。これを使わない手はありません。
ところが、電源出力として欲しい電圧が無いのです。 アナログ用電源としてレギュレータを通して15Vを出力できる電圧として18Vを期待したのですが...。
採用したいと考えていた電源のデータシートを示します。
https://www.mouser.jp/datasheet/2/468/ROE-766139.pdf



当初の思いは図2(a)の方式で確実にノイズを減らすためにレギュレータを使う心算でいたのですが、標準仕様の範囲内では18V出力はありません。
出力電圧は15Vまでで、他社製でなら同じ寸法で24V出力がありますが、9Vも降圧するのもどうか。選択肢としてはありえますが、あまりやりたくは無い気がします。

   余談
 前世紀の時代に主流であったアナログオシロスコープでは電源部に商用周波数のトランスを使用して複数の電圧を発生させている製品がありました。
耐ノイズ性という見方ではこれがベストかもしれません。今回はPIC32MM_CPU基板から電源をもらうので電源電圧は+5Vのみです。


 他の選択肢として考えたのが図2(b)のレギュレータの使用を止めてフィルタに置き換える方法です。
絶縁電源の内部発信周波数は概ね100kHz程、ノイズレベルは100mV程なので、この周波数付近で60dB程度のLCフィルタを入れれば使えるレベルになります。
 ただ、最初の基板では確実に動作させたいので図2(c) 苦肉の策を採用します。この方式では絶縁電源の数が2倍になるものの部品の入手性は良好で基板面積も絶縁電源が小型のため最小限のデメリットで収まります。また、特にDA変換では絶縁の+5Vが必要な用途もあるので左程無駄にはなりません。

 次はAD/DA変換用のデバイスを検討します。


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